財形貯蓄(財形)は、企業を通じて従業員が給与天引きで貯蓄を行う制度です。長年にわたり、多くの人々に利用されてきたこの制度ですが、近年では「財形貯蓄をやめた方がいい」という声も聞かれるようになりました。本記事では、財形貯蓄の基本的な仕組みを説明した上で、やめた方がいい理由や、逆に続けるべき理由について詳しく解説します。

財形貯蓄とは?

財形貯蓄は、正式には「勤労者財産形成貯蓄」と呼ばれ、企業が従業員の給与から自動的に一定額を天引きし、貯蓄を行う制度です。主に以下の3種類があります。

  1. 一般財形貯蓄:自由に使える貯蓄で、1年以上継続すれば引き出しが可能。
  2. 財形住宅貯蓄:住宅の購入やリフォームを目的とした貯蓄で、最大550万円までの利子が非課税。
  3. 財形年金貯蓄:老後の年金を目的とした貯蓄で、最大550万円までの利子が非課税。

財形貯蓄の最大の特徴は、給与天引きで自動的に貯蓄が行われるため、貯金が苦手な人でも無理なく続けられる点です。また、財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄では、利子が非課税になるという税制上の優遇もあります。

財形貯蓄をやめた方がいい理由

財形貯蓄をやめた方がいい理由は以下のとおりです。

1. 金利が低い

財形貯蓄の最大のデメリットは、金利が非常に低いことです。近年の超低金利政策により、財形貯蓄の金利は0.1%以下となっている場合がほとんどです。これでは、貯金がほとんど増えないため、資産形成としては効率が悪いと言えます。

例えば、100万円を年利0.1%で5年間預けても、利息はわずか500円程度です。同じ金額を他の金融商品に回せば、もっと高いリターンを得られる可能性があります。

2. 引き出しに制限がある

財形貯蓄は、特に財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄の場合、目的外で引き出すと税制上の優遇が受けられなくなるだけでなく、ペナルティが課されることがあります。そのため、緊急時にすぐに現金化できないというデメリットがあります。

例えば、急な出費が発生した場合でも、財形貯蓄からすぐに引き出すことができず、他の手段で資金を調達しなければならないことがあります。これでは、貯蓄の柔軟性が低いと言えます。

3. 他の金融商品の方が有利

財形貯蓄の金利が低いことを考えると、他の金融商品を利用した方が有利な場合があります。例えば、以下のような選択肢があります。

  • 投資信託:長期的に見れば、株式市場の成長に伴い、高いリターンを得られる可能性があります。
  • 定期預金:財形貯蓄よりも金利が高い場合があり、特にネット銀行では比較的高い金利を設定していることがあります。
  • iDeCo(個人型確定拠出年金):老後資金を貯めるための制度で、税制上の優遇が受けられる上に、投資による資産形成が可能です。

これらの金融商品は、財形貯蓄よりも高いリターンを期待できるため、資産形成を効率的に行いたい人にとっては魅力的な選択肢です。

4. 企業によって制度が異なる

財形貯蓄は、企業が制度を導入している場合にのみ利用可能です。そのため、転職や退職をすると、財形貯蓄を続けられなくなることがあります。また、企業によっては財形貯蓄の手数料がかかる場合もあり、必ずしも全ての従業員にとってメリットがあるとは限りません。

さらに、企業によっては財形貯蓄の運用方法が異なるため、自分のニーズに合わない場合もあります。例えば、特定の金融商品しか選択できない場合や、手数料が高い場合などがあります。

財形貯蓄を続けるべき理由

財形貯蓄を続けるべき理由は以下のとおりです。

1. 自動的に貯蓄ができる

財形貯蓄の最大のメリットは、給与天引きで自動的に貯蓄が行われるため、貯金が苦手な人でも無理なく続けられる点です。特に、貯金が苦手でついつい使ってしまうという人にとっては、強制的に貯蓄ができるため、非常に有効な手段です。

2. 税制上の優遇がある

財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄では、利子が非課税になるという税制上の優遇があります。特に、住宅購入や老後資金の準備を考えている人にとっては、この優遇は大きなメリットです。

例えば、財形住宅貯蓄を利用して住宅ローンを組む場合、利子が非課税になるため、結果的にローンの負担を軽減することができます。

3. 安心感がある

財形貯蓄は、元本が保証されているため、リスクがほとんどありません。投資などに比べて安定性が高く、確実に貯蓄を増やしたい人にとっては安心感があります。

特に、リスクを避けたい人や、資産を守りたい人にとっては、財形貯蓄は適した選択肢と言えます。

財形貯蓄をやめるかどうかの判断基準

財形貯蓄をやめるかどうかは、個人の状況や目的によって異なります。以下に、判断基準をいくつか挙げます。

1. 金利の低さをどう考えるか

財形貯蓄の金利が低いことをどう考えるかが重要なポイントです。もし、他の金融商品でより高いリターンを得られる可能性があるなら、財形貯蓄をやめて他の手段を検討する価値があります。

2. 引き出しの柔軟性が必要か

緊急時にすぐに現金化できるかどうかも重要な判断基準です。財形貯蓄は引き出しに制限があるため、柔軟性を求める人には向いていないかもしれません。

3. 税制上の優遇を活用できるか

財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄の税制上の優遇を活用できるかどうかも考慮すべき点です。特に、住宅購入や老後資金の準備を考えている人にとっては、この優遇は大きなメリットとなります。

4. 他の金融商品との比較

財形貯蓄と他の金融商品を比較し、どちらが自分の目的に合っているかを検討することが重要です。例えば、投資信託やiDeCoなど、他の手段を活用することで、より効率的に資産形成ができる可能性があります。

まとめ

財形貯蓄をやめた方がいいかどうかは、個人の状況や目的によって異なります。金利が低いことや引き出しに制限があることから、やめた方がいいと考える人もいる一方で、自動的に貯蓄ができることや税制上の優遇があることから、続けるべきと考える人もいます。

最終的には、自分のライフプランや資産形成の目的に合わせて、財形貯蓄を続けるかやめるかを判断することが重要です。もし、財形貯蓄をやめることを検討しているのであれば、他の金融商品との比較をしっかりと行い、自分に最適な選択をすることが大切です。

財形貯蓄は、確かに便利な制度ですが、必ずしも全ての人にとって最適な選択肢とは限りません。自分の状況や目的に応じて、柔軟に判断することが求められます。